高畑精麦 大麦ってなに?

大麦ってなに?

●原産地

大麦はイネ科ウシノケグサ亜科に属する一年生または越年生草本です。
六条種大麦の原産地は西アジア地域と推定され、世界最古の作物の一つです。日本には、2~3世紀に朝鮮を経て渡来したといわれています。
一方、二条種大麦の原産地は西南アジアと推定され、日本へは欧米より明治時代に導入されました。

●種類

穂の条性により、小花が六条に並んでつく六条種二条に並んで付く二条種に分類されます。六条種は、さらに皮麦裸麦に分けられます。皮麦は殻が子実に密着して離れにくいですが、裸麦は容易に離れます。二条種も皮麦ですが、一般的に皮麦と呼ぶ場合には六条種を指します。裸麦は六条大麦に対して耐寒性が弱いので、四国・中国・九州など西日本での栽培が多く、六条大麦の栽培は関東以北に多いです。

子実は先端がややとがり、背面に縦溝があります。一般に二条種は六条種に比べ、粒が豊満で大きいです。千粒重は六条大麦25~35g、裸麦25~30g、二条大麦40~50gです。六条種に糯(もち)種があります。

●成分

大麦の成分は小麦とよく似た成分です。小麦に比べて繊維がやや多く、灰分、カルシウム、鉄分、ビタミンB1、ニコチン酸などがやや多くあります。(押し麦に加工したものは、糖質は高まりますが、脂質、繊維、灰分、はじめ無機質、ビタミン類はやや低下します。)

大麦の成分で最も多いのは澱粉であって、いわゆる澱粉作物と理解してもかまいません。次に多い成分は蛋白質ですが、小麦の蛋白質であるグルテンは粘りがあり、パンや麺に適しているのに対し、大麦の蛋白質はホルデインと呼ばれ、粘りがないのでパンにすると膨れませんし、麺にするとつなぎがないので切れ切れになります。

●種子の構造

① 種子
種子は両端がややとがり、背面には縦溝があります。大きさは品種によってもかなり異なりますが、概して二条大麦は六条大麦よりも豊満で粒重も大きいです。内部構造は六条大麦では穀皮(内・外頴)は表皮、厚角組織、柔組織よりなり、穀皮の内表皮は果皮の表皮に癒着しています。果皮・種子の構造は小麦に類似しています。

胚乳は外表に糊粉層、内部がでんぷん貯蔵組織となっていますが、糊粉層は小麦と異なり、六条大麦・裸麦など六条種では約3層、二条大麦では3~4層の糊粉細胞より形成せれる厚い組織です。また糊粉層に青色の色素を(花青素)を含む品種系統があります。この場合には粒が青色に見えます。なお、色素は品種によっては果皮に含むものもあり、穀皮にふくまれることもあります。果皮や穀皮の色素は紫や赤紫であるといいます。

でんぷん貯蔵組織に充満しているでんぷん粒には、大型のレンズ型と小型の球形の2種類があります。でんぷんは大部分の品種は粳(うるち)性であり、糯性品種もありますが栽培は少ないです。貯蔵蛋白質には小麦のようなグルテンが含有されません。

胚の形は小麦に似ていますが、芽麟を欠き、根鞘と胚盤の区別が不明瞭です。種子根は、六条種はふつうほぼ5本、二条種では普通7~8本分化しています。また、幼芽には葉原基が第4葉まで分化しています。これらの諸点が小麦と異なっています。

② 発芽と芽生器官
発芽に際しては、鞘葉は六条大麦では、果皮の下を粒頂部の方へ伸びてから果皮を破り、外頴の頂部からはじめて外にあらわれます。裸麦では粒中央部で果皮を破って外にあらわれる特徴があります。種子根は3~6本発生して、概して小麦より少ないですが、二条大麦では10本以上もあらわれる品種があります。第一葉は成長につれて葉身がねじれる特徴があります。

③ 根
根の外部および内部形態はともに小麦とよく似ています。

根系は半径15~30cm、深さ90~110cmまで分布し、それは小麦よりやや浅いです。特に大麦では湿潤地や固決土壌では浅い根系となる性質が強いです。一般に北日本の品種は深い根系を作り、暖地の品種は浅い傾向があるといわれます。

④ 葉及び稈・分けつ
葉は小麦よりやや短いが幅広く、このため幼植物の時は小麦より大柄に見えるため大麦の呼名がついたといわれます。葉耳は小麦より大きい。止葉は短小で品種の特徴がでます。主稈葉数は12.8~18.0枚であり、主稈葉数と出穂期の間には小麦と違って相関関係はほとんど認められません。

大麦の品種は長型(並性)と短型(渦性)の2型に区別されますが、この区分は暗黒条件下で鞘葉の伸びる長さが37㎜、明条件下で34㎜を境にして分けることができます。長型の長稈品種では稈長180㎝になりますが、一般には1m前後で日本では概して90㎝以下の品種が多く、一般に小麦より低いです。短型品種は短稈で、草丈、葉長、穂や芒の長さ、粒長などについても長型品種より短い性質があります。

●用途

大麦は欧米ではほとんど飼料とされ、一部が醸造用とされています。中国、インドなどでは一部が人間の食糧とされています。日本では昔から米食の補助食糧とされていますが、現在では一部が人間の食糧とされ、またビール麦とよばれて栽培される二条大麦が醸造用にされています。

大麦は精麦加工によって、ふ、果皮、種皮、糊粉層及び胚乳だけの粒(丸麦)とし、それをさらに精麦します。精麦は加熱、加湿、圧扁して押し麦とすることで、縦溝部に沿って切断し、これを圧扁する方式もあります。これを白麦と呼んでいます。外国では高度に加工した丸麦をpearl barleyと呼んでいます。これら食用の品質としては精麦歩留りが高く、また精麦白色が優れることが望まれています。なお、糯種の大麦は餅のように加工して利用されます。欧米では糯種の利用は全く無く、日本でも従来は糯大麦が一部で僅かに利用されていましたが、今は利用がなく、品種もなくなりました。

大麦はグルテンを含まないので、パン用に適さず、また微量の不味物質も含まれるので粉食には向きません。一方、酵素力は強いので醸造用にされ、ビール用には二条大麦が蛋白質少なく、でんぷんの比率が高いので適します。アメリカでは六条大麦もビール用にされています。またウイスキー原料として重要です。醸造用には大麦を発芽させて作る麦芽(malt)が原料とされますが、麦芽は水飴として菓子用にも利用されます。

その他、味噌、醤油原料にも利用されます。大麦はまた炒って粉にしてはったい粉とし、菓子原料にも利用されます。

●利用例

大麦は精麦、麦こがし、麦茶、発酵食品などの原料に用いられています。

精麦 麦飯用として、押し麦、白麦及び米粒麦が市販されています。(参照)
押麦 原料(皮麦、裸麦、場合により二条種)を精白し、蒸気で加熱、ローラーで圧扁したものです。
真ん中に「ふんどし」と呼ばれる黒条のあるのが特徴です。押麦は麦飯用として利用しますが、沖縄には「あまがし」とよび、押麦と豆(ウズラマメ・アズキ・リョクトウなど)を炊き、黒砂糖で味つけした端午の節句につくられる行事食品もあります。
白麦 原料麦を精白する過程で黒条に沿って二つに切断し、加熱圧扁したものです。
麦飯の外観・舌触りが米飯に似ています。
米粒麦 圧扁しない白麦です。
精米と比重がほぼ同じなので炊飯の際に麦が浮き上がらない特徴があります。
麦こがし 原穀を煎って粉にしたもので、香煎、はったい粉、いり粉とも呼ばれます。原料は関東では皮麦、関西では裸麦を使っています。
麦こがしを原料とした和菓子に麦落雁があります。
麦茶 大麦を炒ったもので、原料は主に皮麦が用いられます。
大麦麺 江戸時代には麦切りと呼ばれる大麦麺が見られましたが、最近では乾麺が市販されています。
大麦粉に小麦粉をつなぎとした麺で、独特の食感があります。
発酵食品 大麦を原料とした発酵食品には、精白粒を用いた田舎味噌とも呼ばれる麦味噌、金山寺(径山寺)味噌、麦焼酎などの伝統食品と二条種の麦芽を用いたビール・ウイスキーがあります。

このページのトップへ